旅辰

サークル「鷹恋」一次創作、その他趣味のブログです。

新刊「うさぎとかめのお茶会」

Neoぱらだいす9 新刊です。

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一次創作「うさぎとかめのお茶会」200円P20(小説&マンガ) 
以下小説サンプルです。

 


うさぎとかめのお茶会

 うららかな春日和、とはいえ季節は夏。どこかの地面から歌声が聞こえてきます。お茶会に遅れそうなうさぎが、近道をしようと狭い洞穴を通り抜ける途中、身体が詰まってしまったようです。猫は寝転んでいた木の上から落ちそうになりながら目を覚ましました。下を覗き込むと、うさぎは辛うじて頭だけを地表へ出し、大声で叫ぶように歌っています。

うさぎはうたう
亀の子どっこ?
うさったいなそんな訴う
噛めば角っこか
うっさうっさと油を売った
カーめ、鳴く鳥いどころ
憂さ晴らしで打ったよ

 首をフリフリ振りながら、うさぎは洞穴に引っ掛かった身体を出そうと必死でした。猫は薄い布切れで出来た自分の服を払いながら「歌ったところで穴から出てこれるものか」と飽きれぎみです。猫にほんの少しの親切心があれば「そこのうさぎさん、穴から出るのをお手伝いしましょうか」何て気の利いたことが言えたのでしょうが、猫は耳を垂れさせそっぽを向くと再び眠りについたのでした。猫のほかには木々があるだけで、誰もうさぎに手を貸そうとはしません。しばらくすると猫のすぐ下を甲羅模様のスーツで身を包んだ紳士的な亀が通り過ぎました。そしてうさぎを見やるとこう声をかけます。
「やあうさぎ、こんなところで穴掘りかい?」
「違う、違う。肩が突っかかって出られないんだよ」
静かに亀は大きな頭を横へ振り、溜め息をつきました。
「君はいつもそうだな。木に上れば蝙蝠に耳をかじられる。うさぎらしく穴を掘れば突っかかり……」
亀の言葉をうさぎはとっさに遮ります。
「蝙蝠じゃなくて、フクロウだよ。それに穴は元からあったんだ。三時のお茶会にはこの穴を通るのが一番近いからね」
「三時だって! 今三時と言ったかい?」
驚いた亀は懐から懐中時計を取り出し針の位置を確かめました。
「大変だ、もう四時じゃないか」


うさぎ
文字つぶれたのでまた差し替えます。2/13

Pixivにupしました。3/5

【Neoぱらだいす9】「【創作】うさぎとかめのお茶会【サンプル】」イラスト/青伽(自家通販終了) [pixiv]